生命保険は本当に必要? | 夫が亡くなったら家族はいくら受け取れるか計算してみた

生命保険は本当に必要かを解説するアイキャッチ画像。亡くなった35歳くらいの眼鏡の男性から,残された妻と子どもにお金が流れていく構図で,遺族年金や受け取れるお金を考える内容を表している。 資産形成
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保険なしでも、国の制度でどこまで守られるか。実際の数字で確認してみた

こんにちは、さとさんです。

今回は、保険の見直しを進めるうえで、あまり考えたくない

「そもそも、自分(夫)が亡くなったとき、家族はどれくらいのお金を受け取れるのか」

について、きちんと考えてみようと思います。

民間の生命保険に入っていなくても、国の制度から受け取れるお金は意外と多い、という話はよく聞きます。
でも実際にどのくらいなのか、具体的な数字で整理したことがありませんでした。

今回は、以下の前提条件で、夫が亡くなった場合に家族が受け取れるお金をシミュレートしてみました。

結論から先に言うと、団信と遺族年金だけで、生活の土台はかなり守られます。

高額な民間保険でカバーすべきリスクは、本当は思ったより小さいかもしれません。

皆様の保険を見直す際の一助になれば幸いです。

前提条件(シミュレーションの設定)

今回の試算の前提は以下のとおりです。

項目内容
35歳、会社員(厚生年金加入、22歳から就労)
35歳
5歳・2歳の2人(計4人家族)
住宅ローン5,000万円(団信あり)
民間生命保険なし
夫の額面年収(計算用仮定)約500万円(標準報酬月額38万円で計算)

※夫の年収はシミュレーション上の仮定です。実際の遺族厚生年金額は、「ねんきん定期便」に記載されている老齢厚生年金見込み額の3/4がおおよその目安になります。

団信で住宅ローン5,000万円が消える

まず最初に確認しておきたいのが、団信(団体信用生命保険) の効果です。

住宅ローンには、借入人が死亡(または高度障害)した場合にローン残高が全額弁済される「団体信用生命保険」が付いています。

借入先によっては、他にも保障が付帯している場合もあるので、自分の契約内容は確認しておきましょう。
参考までに、私が契約しているauじぶん銀行では、ガンや入院に対しても、上乗せ金利なしで保障されていました。

ねんきん定期便に記載された老齢厚生年金の見込み額の例
ねんきん定期便の「3. これまでの加入実績に応じた年金額」欄で老齢厚生年金の見込み額を確認できる

余談ですが、金利を上乗せすると、ガンや入院などの保障を厚くできるようになっているケースもありますが、個人的にはやめておいた方がいいと思っています。

もし本当に保障が必要だと思うなら、掛け捨て保険でカバーしましょう。
ローンはローン、保障は保障とシンプルな構成を保つことをお勧めします。

話を戻します。

今回のシミュレーションでは、夫が亡くなった時点で残っているローン残高が全額保険で支払われると仮定しています。

つまり、

  • 住宅ローンの残債は即日ゼロになる
  • 家はそのまま家族のものになる
  • 今後の住宅費(ローン返済)の負担はゼロ

これは、生活防衛という観点では非常に大きい効果です。

5,000万円のローン残高に相当する生命保険を民間で持っているのと同等の働きをしています。
「保険がないと家を失う」という不安は、団信がある限り感じる必要はありません。

遺族年金とは何か

会社員として厚生年金に加入している夫が亡くなった場合、妻(と子ども)は2種類の遺族年金を受け取ることができます。

  • 遺族基礎年金:国民年金から支給。18歳未満の子どもがいる配偶者に支給される。
  • 遺族厚生年金:厚生年金から支給。原則として妻が生きている間ずっと受け取れる。

これらは所得税が非課税です(所得税法第9条)。

受け取っても税金がかかりません。この点は、民間の生命保険の死亡保険金(相続税の対象になりうる)とは異なります。

なお、遺族年金を受け取るためには、亡くなった方が一定の保険料納付要件を満たしていることが必要です。
会社員の場合、給与天引きで厚生年金が支払われているため、通常は要件を満たしていますが、もし長期にわたる未払い期間がある場合は個別に日本年金機構に確認しましょう。

(出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」)

遺族基礎年金の計算

遺族基礎年金は、18歳になった年度の3月31日を迎えていない子どもがいる配偶者に支給されます。

支給額(令和8年4月分から)は以下のとおりです。

項目年額月換算(概算)
基本額847,300円70,600円
子の加算(1・2人目 各)243,800円20,300円
子の加算(3人目以降 各)81,300円6,800円
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)の遺族基礎年金の年金額(令和8年4月分から)」令和8年4月1日更新

今回のケース(子2人)での金額:

847,300 + 243,800 + 243,800 = 1,334,900円/年
月額換算:約111,200円/月

子の人数による切り替わり

子どもが成長して「18歳になった年度の3月31日」を超えると、その子は加算対象から外れます。

  • 5歳の長子が18歳になるまで(約13年間):子2人の加算 → 月111,200円
  • 長子が18歳以降、2歳の次子が18歳になるまで(約3年間):子1人の加算 → 月90,900円
  • 次子が18歳以降:遺族基礎年金は終了(妻が51歳のとき)

もし現在子どもが1人しかいなければ、遺族基礎年金はその分少なくなります。子どもの人数は、受け取れる金額に直接影響します。

遺族厚生年金の計算

遺族厚生年金の額は、亡くなった夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。

(出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」令和8年4月1日更新)

さらに、被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算する特例があります。

夫は35歳で、22歳から就労したとすると厚生年金の加入期間は約13年(156月)です。
300月未満のため、300月とみなして計算します。

夫は2013年頃(平成25年頃)に就職しており、保険料の加入期間はすべて2003年(平成15年)4月以降です。この場合の計算式は以下のとおりです。

報酬比例部分 = 平均標準報酬額(月換算)× 5.769/1000 × 300月
遺族厚生年金 = 報酬比例部分 × 3/4

今回は夫の額面年収を約500万円(平均標準報酬月額38万円)と仮定して計算します。

380,000 × 5.769/1000 × 300 ≈ 658,000円/年
658,000 × 3/4 ≈ 493,000円/年(月額 約41,100円)

遺族厚生年金:月 約41,100円

この金額は、妻が再婚しない限り、妻が生きている間ずっと受け取れます

※実際の額は年収・賞与の実績によって変わります。「ねんきん定期便」に記載されている老齢厚生年金見込み額の3/4がおおよその目安になります。

日本年金機構のホームページからも確認できるので、自身の状況に当てはめる際は参照してみてください。
こんな感じで見えます。

フェーズ別シミュレーション

以上をまとめると、夫が亡くなった後に妻が国から受け取れる年金額は、子どもの成長とともに以下のように推移します。

フェーズ期間妻の年齢遺族基礎年金遺族厚生年金月額合計
フェーズ①子2人が18歳未満の間(約13年)35〜48歳111,200円41,100円約152,300円
フェーズ②次子のみ18歳未満の間(約3年)48〜51歳90,900円41,100円約132,000円
フェーズ③次子18歳以降〜妻65歳まで(約14年)51〜65歳0円41,100円+中高齢寡婦加算 53,000円約94,100円

住宅ローンの返済がゼロであることが、この数字をさらに実質的に大きくします。

中高齢寡婦加算について

フェーズ③で出てきた「中高齢寡婦加算」について補足します。

2歳の次子が18歳になったとき(妻が51歳のとき)、遺族基礎年金は終了します。
このタイミングで「子がいない」状態になりますが、代わりに中高齢寡婦加算が加算されます。

この制度は、「子のある妻が遺族基礎年金を受けていたが、子が成長したために受けられなくなった場合」に、40歳〜65歳の間、遺族厚生年金に上乗せされる給付です。

金額(令和8年度):635,500円/年(月額 約53,000円)

(出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)の中高齢寡婦加算」)

遺族基礎年金が終わった後も、65歳まではこの加算のおかげで月約94,000円が公的給付として受け取れます。

妻の収入を加えると家計はこうなる

ここに妻の収入が加わります。

【正社員の場合】手取り月20万円

フェーズ公的年金(月額)妻の手取り収入合計(手取り相当)住宅費
フェーズ①約152,300円200,000円約352,300円なし
フェーズ②約132,000円200,000円約332,000円なし
フェーズ③約94,100円200,000円約294,100円なし

【パートの場合】手取り月13万円

フェーズ公的年金(月額)妻の手取り収入合計(手取り相当)住宅費
フェーズ①約152,300円130,000円約282,300円なし
フェーズ②約132,000円130,000円約262,000円なし
フェーズ③約94,100円130,000円約224,100円なし

住宅費の負担がゼロであることを考えると、パートでもフェーズ③で月22万円前後の手取り相当が確保でき、生活の土台としては十分成り立つケースが多いと思います。

もちろん、

  • 生活費がもっと欲しい
  • 妻が専業主婦で収入がない
  • 子どもの大学費用などまとまった出費がある
  • 手元の金融資産がほとんどない

という場合には、別途備えが必要です。
ただし、「保険がないと家族が路頭に迷う」という前提が、必ずしも正確ではないことは、この数字からわかります。

民間の生命保険は本当に必要か

ここまでの内容を整理すると、こうなります。

家計上のリスク公的制度での対応
住宅ローンの返済団信で消える
子どもがいる間の生活費遺族年金(月10〜15万円)+妻の収入でカバーできる可能性
子が独立後の生活費遺族厚生年金+中高齢寡婦加算(月約9万円)+妻の老齢年金

民間の生命保険が上乗せとして役立ちうる場面としては、以下が考えられます。

  • 妻が専業主婦で収入がなく、すぐに就労できない状況
  • 子どもの教育費(私立・大学など)を手厚くしたい
  • 妻が健康上の理由で長期間働けないリスクがある
  • 手元の金融資産がほとんどない

逆に言えば、これらに当てはまらない場合、月数万円の高額な死亡保障保険料を払い続けることの合理性は薄いかもしれません。

「まず国の制度でどこまでカバーされるかを確認する」→「その上で足りない部分を保険で補う」という順番が、正しい考え方だと思います。

ちなみに、今回のシミュレーションは、死亡時の貯蓄は一切考慮していないため、もし貯蓄がある場合は、投資とうまく組み合わせると、教育費や老後資金もカバーできる可能性もあり、ますます保険の必要性は薄くなりそうですね。

まとめ

今回は、夫35歳・妻35歳・子2人・住宅ローン5,000万円(団信あり)・生命保険なしのケースで、夫が亡くなった場合の公的給付をシミュレートしました。

  • 住宅ローン5,000万円は団信で一括消滅
  • 遺族基礎年金(子どもがいる間):子2人で月約111,200円、子1人で月約90,900円
  • 遺族厚生年金(夫年収500万仮定):月約41,100円(終身)
  • 末子が18歳以降、妻65歳まで中高齢寡婦加算(月約53,000円)が加算される
  • 遺族年金はすべて非課税

結果として、妻の手取り収入が月20万円程度の場合、月30万円前後+住宅費ゼロという生活基盤が整う試算になります。

民間の生命保険の否定ではありませんが、まず国の制度でどこまでカバーされるかを正確に把握した上で、本当に必要な保障額を判断することが重要です。

「国の制度を知らないまま、なんとなく高額な保険に入る」という状態を避けるために、この記事が少しでも役立てば幸いです。

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